山林火災に考える
2026/04/28記
 4月22日に発生した岩手県大槌町の山林火災は本日午前6時現在で1,633[ha]に広がったと岩手県庁が発表した。避難指示は人口の3割に当たる1,558世帯、3,257人に上る規模である。これは令和7年2月26日に大船渡市発生した火災の約3,370[ha]に次ぐ戦後2番目の面積であり、地球温暖化は海岸沿いの街には大規模火災を発生させる危険性を示しているようで房総半島でも安堵できない。昨日からの雨が本日には強くなるというので、早く鎮火情報が出されることを願うばかりである。
 
 大船渡の火災でも思ったのであるが消防水利の無い山林火災は消火に大変な困難が伴うことを改めて実感知る。地元の消防団員は背負子で水を運び鎮火に当たっているが、20[kg]の水を背負って急斜面を移動する苦労は、登山経験の多い私にはどれほど厳しい行為なのかと想像できる。
 おまけにそれだけ苦労して担ぎあげた水は火に対して僅かの効果しか期待できない。木更津市消防団が使用している可搬消防ポンプはB-2クラスで放水量1.0[m3/min]なので、僅か1.2秒分の水量を苦労して担ぎ上げていることに成るのだ。
 
 自衛隊の大型ヘリであるCH-47(チヌーク)は一気に5[m3]を散水するので1台の可搬ポンプで5分間の放水に匹敵するが、水を汲み現場で散水する一連の作業は到底5分で収まらない上にピンポイントでの消火には成りにくいため可搬消防ポンプ1台分程度の働きをしているとは言えない。
 つまり通常の火災現場のようにポンプによる消火が最も優れているのであるが、山林火災の現場のように水利から遠く高いところにあると膨大な中継ポンプが必要になるから実際には使われていない。
 重たい可搬消防ポンプを山中に運び設置するだけでなく、各所で連携の取れた運転調整を行い、燃料切れに対応するため休まず給油し続けなければならないので、仮に移動しない火元への対応であれば実施する意義は高いが、活動が広範囲に移動する山林火災では盛替え作業も大変なことに成り現実的ではないのである。
 
 個人的には現在の通信による機械制御技術をもってすれば、中継ポンプの無人化は可能であると思うし、燃料を補給しなくて済むように電動ポンプを採用すればよいと考える。長い電力線がネックになるがホースと一体化も難しくは無いだろう。
 更に人力で山林に運び込まなくても済むようにホース5本を背負い6足歩行等による自走機能を備えて欲しい。AIでの自立歩行が成立するまでは信号発信機を付けた先導者の後を付いてくるような仕組みが出来れば消防団員の苦労も減るだろう。
 この様に高性能な機材は自治体消防で持つ必要はなく、特別救助隊の例に倣って東京消防庁直轄の部隊として保存し、全国の山林火災現場に出動できる体制にすればよいと思う。
 
 更に強力なのは人工降雨による消火を目指した気象操作の研究ではないかと思う。昨日は火災に成って6日目にやっと雨が降り、その降水量は1.5[mm]に過ぎなかったがこれに1,633[ha]を乗じると24,495[n3]となりCH-47で4,899回運んだのと同じ水量に達する。17台の可搬消火ポンプを24時間全力で運転させる量でもあるので空地中の水蒸気を雨にさせる効果は大きい。
 2008年の北京オリンピックの開会式では北京市内の「雷雨」を発生させないために開会式の前に周辺部で雨雲の中にヨウ化銀を散布して雨を降らせて中心部に雨雲を届かせない「消雨作戦」を実施した実例は有る。これは雨雲の元を雨に変える技術で、雨雲の生じていない状況から雨にまで持っていくのはハードルが高いと思うが研究の余地は大きいと思う。
 
 本日から大槌町でも雨が強くなるようで鎮火に向かうものと想像するが、高齢化と人口減少が進み、山村部での消防力の低下が今後の課題となる中で毎回同じような対応を繰り返さないよう、合理的な戦略と技術開発が求められているだろう。