データセンターを考える
2025/11/12記
 一昨日開催された都市計画審議会で「木更津市都市計画マスタープランの一部改正」が報告された。報告という位置づけなのは今後の木更津市議会建設経済常任委員会協議会での議論と議会全員協議会での報告を経てパブリックコメントが実施され、その結果をもって来年2月頃に開催される都市計画審議会へ諮問され決定されるという手続きをとるからである。
 
 都市計画マスタープランは下図に示すように総合計画や基本構想を具体化するものとして位置づけられ、これを変更しないと地域計画や地区計画を立案できなくなる。逆に言えば地区計画を立案する前提としてマスタープランを変更するのであり、過去にも頻繁に変更が行われている。
 
 
 今回の改定は吾妻の文化芸術施設整備や江川運動場に近接した防災機能を備えた公園施設の整備、公民から地域交流センターへの移行、都市の低炭素化の促進など多くの変更点が包括されているが、個人的に注目している点は鎌足地区と富岡地区で「変電所周辺において一定程度のインフラが整備されていることから、その特性を活かし需要動向に応じた施設の立地を誘導する地区計画を定めることにより、適切に適切に土地利用の規制誘導を図ります。」という文言が入ることである。
 この「変電所」とは木更津市田川に立地する東京電力パワーグリッド(株)の内房変電所と新木更津変電所を示しており「需要動向に応じた施設」とは、現在北総台地(特に印西市)に林立するデータセンター(以下「DC」)を示していることは明白である。
 
 インターネットの検索や動画閲覧に加え、無人運転やチャットポット(AIによる自動音声回答機能)、AIでの様々な創作活動の普及進化に伴い世界的にDCの需要が増加している。その中にはデータ処理を担うサーバーが膨大に収納されているが、勤務する者は電気や空調の管理、警備、緊急対応を担うエンジニアなど極めて少数であり「雇用を生まないインフラ」と呼ばれている。
 地域の雇用には寄与しないが投下資本が巨大であるため固定資産税として自治体には恩恵があり、印西市では平成23年度では約76億円だった固定資産税収入が令和4年には約126億円まで増加している。人口も増加しているので個人住宅などの増加もあるだろうが同様に人口が増加している本市を圧倒的に凌駕しているのでDCによる影響が大きいと推察できる。
 
 巨額の投資であるため厳しくリスク回避が求められる。日本ではテロや停電等のインフラリスクは少なく政権交代により事業継続が危機に成る可能性も考えにくいが、自然災害のリスクは高い。そのため地盤が固く洪水や津波のリスクのない場所が選ばれる。
 また膨大に電力を消費することなどで電力供給や高度な通信環境も求められるが、印西市の場合は隣接する船橋市の変電所から地下送電トンネルが設けられ、南房総市千倉にある北米やアジアと光ファイバーケーブルを繋ぐ海底線中継所に近い。
 更には成田という国際空港に近いこともあり世界的にブランドイメージが高く、国内企業のDCだけでなくグーグルやアマゾンといった世界的企業を含め40棟以上が運営または建設中の様である。
 DCは太陽光を遮断するため窓が無く、電磁波を遮断するシールドが外壁に施工され、経済性と安全性を突き詰めると極めて無機質で巨大な構造物に成ってしまう。しかし建築基準法上は「事務所」として扱われるため高度制限が無ければ住宅地にも建設可能となり、印西市では住民との間にトラブルが発生している。
 
 今回のマスタープランで想定してしている場所を考えてみると、新木更津変電所周辺は木下層群の洪積層の強固な地盤で小櫃川との高低差もあり洪水被害も想定できない。電力に関しても変電所直近であり火力では日本最大の516万kWの能力を擁する富津火力発電所が後についている。千倉にはより近く、成田や羽田も遠い場所ではない。都市から遠いので駐在の職員には不満だろうが田川の集落からも離れているので建設してもトラブルに成る住民そのものが居ない。因みに印西市で建設中のDCの全てが稼働すると200万kWを超えて群馬県が使う電力を印西市のDCだけで消費することに成るもいう説もある。当方にはそこまで多くの施設は出来ないと思うが、富津火力の多くを消費することに成るのであれば凄いことである。
 
 もう一点の心配は冷却に使用する水の問題である。膨大な電力を消費することで発熱するシステムを冷やすため水の気化熱が使用される。「水の戦争(橋本淳司著:文春新書)」によれば米バージニア州のデータセンター集積地での水使用量が700万立法メートルに達している(同書P25)とあり、かずさ水道広域連合企業団の水道事業が令和6年度に供給した水量は3,888万立法メートルでありバージニア州の使用量の5倍程度である。集積しない限り大きな問題にはならないと思うし大きな需要家が出来ると経営の安定にはなるものの小櫃川の水量が減るような水不足に至った場合、DCに節水を求めることが出来るのかという不安は拭えない。
 
 何れにしろ、今回のマスタープランが変更され地区計画を立案するまでに土地の確保、森林法等の規制解除の手続きや道路等の設計等が有り、造成工事から建築工事までも含めると10年近い時間が必要になるだろうと思う。半導体の小型化と技術革新で既存のDCで数百倍の能力を処理できるようになるだろうから、案外需要は増えないのかもしれないし、冷却技術も大きく変わるだろう。
 頭の片隅にDCのことを考えながらも具体化するまでには印西市へ視察に行かなければならないかなと考えていた。