伊東の騒動を思う
2025/09/12記
 大学卒業と言いながら実は除籍であった。そんな事から始まった話であるが、田久保市長が不可解な行動をとるために政治枠から芸能枠に移ったように伊東市の話題を多くの人が楽しんでいる。
 そもそも指摘された時点で間違えを謝罪すれば済んだであろう話だと思うが、偽造の疑いが濃い卒業証書を「チラ見せ」したとか見せた時間は「19.2秒」であったとか、本質とは関係ない話しに引き込む田久保真紀市長の展開はお笑い芸人や脚本家でも難しいネタ作りのセンスが光る。
 
 卒業証書と本人が主張するものを公開すれば済むような単純な話題を引っ張り続け、その姿勢が市長側に立っていた共産党にも信頼を失わせ、9月定例会の初日である9月1日に不信任決議案が提出され、全会一致で可決された。
 田久保市長は、地方自治法第178条第1項に記載されている通り「【一部略】不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から十日以内に議会を解散することができる」という法的根拠の元に議会を解散するか、辞職・失職するかの判断が迫られた。
 
 2002年に脱ダム宣言によって不信任を受けた長野県の田中知事や2024年に職員へのパワハラ等の疑惑で不信任を受けた兵庫県の斎藤知事は議会の解散を選ばす失職し、有権者の付託を受けて再当選した。この場合は直近の民意が知事を選んだことに成るので常識ある議会は不信任決議案を出すことが出来なくなる。
 その自信が無いか議会議員に選挙で苦労させてやれと考える首長は議会を解散する。再選挙の結果、市長を守る議員が当選して定数の1/3以上に成れば意図的に欠席することで不信任決議案の成立条件である「議員の3分の2以上の出席」を防ぐことが可能となり市長が続投できるのである。
 ただし不信任に賛同しないが議員は議会に出席することが当たり前であるという常識を持った議員が当選した場合、「議員の3分の2以上の出席」が成立してしまい、その過半数が不信任決議案に賛同した場合は自動的に失職となる。
 伊東市の場合はそもそも現議員が全会一致で不信任としたため選挙の結果、定数20人のうち7人の市長派が当選する事態は想定できないので再度不信任案が出され、多分可決され自動失職となり選挙が行われる。そこで田久保市長が万が一でも当選した場合は不信任を出せなくなるが議会運営は難しくなるだろう。
 
 知っての通り、10日以内に解散というリミットに近い今月10日に中島議長に対し「市政にとって、また、市民生活において大変重要な議会においての審議や採決が議会初日をもって放棄されてしまったという事実は、事実として冷静に受け止め、判断し、これは改めて広く市民に信を問うべきであると考えました」と理由付けして解散通知書を手渡した。
 そんな理由で解散するなら速やかに9月2日に行い粛々と手続きを進めるべきと思うのだが、ひたすら時間稼ぎが続いている。
 
 そもそも議会は様々な市民の代弁者が終結している場でありそこで全会一致で不信任が可決されたということは信を問う必要もないレベルなのであるが、それは本人も承知の上であろうと思う。
 伊東市民が田久保眞紀さんを市長に選んでしまった結果、市政の空白で重要な政策が決められず、混乱の結果としてふるさと納税による収入も減り、最後は一般財源で行わなくてはならない選挙により63百万円の選挙費用を消費しなければならなくなる。
 もちろんオール与党の候補に対して戦いを挑み立派な首長を務めた政治家は列挙にいとまがないし、既得権益から離れて大きな転換を果たした人も数多く存在する。多くの伊東市民はソーラー発電所や図書館の建設に対して先頭に立ってきた田久保さんが、まさか学歴詐称問題でこれほど錯乱するなんて思っていなかっただろう。その意味では選んだあなたが悪いと言うのは酷である。
 
 市議会議員選挙の日程は10月12日告示19日投開票と決まったようだが、当選した議員で不信任案を決議するためには議会を開催しなければならない。ところが過去の地方自治法では市議会の開催は市長の権限となっていたため法律上は市議会を開催せず、全て専決処分で市長が決めることが可能であったため、実際に2010年に鹿児島県阿久根市の竹原市長は市議会を招集せずに様々なことを独断で決定したようである。
 そこで2項として「議長は、議会運営委員会の議決を経て、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる」と追加されたが当選したばかりの議員は議長を定める議会を設けていないので適用できない。
 それを補完するため3項目に「議員の定数の4分の1以上の者は、当該普通地方公共団体の長に対し、会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる」と規定されている。議員に当選証書が渡され議長も決まっていない中で臨時会の招集を要求することは法的に可能であるが6項目の規定は「第3項の規定による請求のあつた日から20日以内に当該普通地方公共団体の長が臨時会を招集しないときは、第1項の規定にかかわらず、議長は、第3項の規定による請求をした者の申出に基づき、当該申出のあつた日から、都道府県及び市にあつては10日以内、町村にあつては6日以内に臨時会を招集しなければならない。」となっている。これは議長に議会の招集権を与えた項目なのであるが、今回初めて議長が居ない状態で市長が議会を招集しない事態を続けることが可能なのか、個人的には注目している。
 
 田久保市長が市政を空転させている理由は本人にしか解らないが、真実の一つとして市長の在位期間が長ければ市長報酬や退職金が加算されということがある。伊東市の市長報酬は85万5千円であり仮に12月1日まで在職すると退職金は269万円になるようだ。更に冬の期末手当が185万円と想定されているようだ。もちろん、誰が市長に成ってもこの歳出は出ていくので早く辞めたから歳出が削減できるという金額ではないが、市政を混乱させ、実質的には何もしていない者にこの金額を払うことが市民感情上どうかという話だろう。だから「市民ファーストなんて言いながら自分ファーストだったのね」という市民の声が報道に乗るのである。
 
 木更津市でも同じ事態が生じないとは限らない。選んでしまった政治家が想像とは違っていた場合のリコールや全会一致での議会を解散することの是非など、様々な法律の不備が明らかになるようで今回の伊東市の騒動に注目している。