田浦を見て考える
2025/08/11記
 先月上旬のニュースで横須賀市の「市営月見台住宅」が生まれ変わり新しい価値を提供し始めていることを知った。
 詳しい状況をネットで調べてみると、横須賀市が1960年に開設した木造平屋とブロック造平屋の32棟、74戸の市営住宅であり老朽化に伴い2020年に全入居者が退去して空家となり、長浦湾を望める標高約60mの丘にあるため『天空の廃虚』と呼ばれていたものを、横須賀市は再生に向けた民官連携事業として鎌倉市の不動産会社「エンジョイワークス」と協定を締結し、リノベーションして店舗兼用住宅として貸し出し7月に「まちびらき」をおこなったというニュースであった。
 
 月見台住宅はJR田浦駅から徒歩10分ほどに位置しているもののアクセス道路が細く、市営住宅としては廃止したものの民間への売却による土地活用が見込めない中で、市が土地と建物を無償で10年間貸与し、不動産会社が資金を調達してリノベーションし、店舗と住居を兼用した「なりわい居住のまち」として貸し出すものであるが、既に入居希望者が募集数を超えるなど話題に成っているとのことである。
 木更津市も祇園住宅や久津間住宅を廃止し解体売却を計画しており、木更津病院に隣接する岩根住宅に至っては解体せずに上物が残ったまま土地売却を行うなど老朽化した市営住宅跡地を民間活力によって再生する方向で事業を進めているが、そのような建築物でも人気が出る手法が有るのかと気になっていた。
 
 何より場所が「JR田浦駅」の近くである。快速列車が停まるホームが列車より短いので一部のドアが開かないことを車内放送で流してドアを開けずに対応している駅も「巌根駅に快速列車を停めよう!推進協議会」事務局長(ただし休眠中)としては現地を見たいと思いながら何時でも行けると先送りしていたので、これは何かの縁だと思い検討を始めるとともに、9月議会で取り上げることを決めて自分に義務を課した。
 
 木更津駅から田浦までの片道料金は2,310円で、高速バスと京浜急行を使って安くあげても2,216円もする。しかし休日に限りお得な「休日おでかけパス(2,720円)」がある事を知っていたので昨日の日曜日に木更津駅の券売機で購入して出かけたが、よく考えるとさらに50円安い「のんびりホリデーSuicaパス」がある事に購入後に気が付いた。なおHPを見ると指定席券売機で販売と有り巌根駅で購入できるか解らなかったので木更津駅から乗車した。
 9:39の内房線各駅列車を千葉駅で久里浜行き快速に乗り換えて東逗子駅を出ると「次は田浦、田浦。お出口は右側です。田浦駅では一番前の車両と次の車両前よりの車両はトンネル内のため開きませんのでお降りのお客様は他のドアをご利用ください。」というアナウンスが流れ田浦駅には12:21に到着する。同じ時間に東京駅を出発した「のぞみ129号」は新神戸に着いていると思いながらホームに降りると前の車両はトンネルの中に停止していた。
 
 
 巌根駅でも「巌根駅では一番前の車両と次の車両前よりの車両はホームが有りませんので開きません。お降りのお客様は他のドアをご利用ください。」というアナウンスを流せば10億円などという法外な工事費を払わずに快速列車の停止も可能になるのにと思いながら駅を出る。駅前の看板や途中の道路には「月見台住宅」の案内も無く、地域を上げて話題にしているようではなかった。それにしてもアクセス道路は狭く、降り始めた雨に対して傘をさすと車と擦違うのが難しいほどであった。
 
 
 屈曲する車道をショートカットする階段を上り市営住宅の案内看板の所に着くが駐車禁止を知らせる補助看板があるだけで、まちびらきを終えた感覚も伝わってこない。案内図を見ると3本の道路が住宅地に設置されているが、2本は階段で接続されており車両での利用を前提としていない構造に設計の古さを感じる。
 しかし団地の中に入ると現場見学をしていると思える6人ほどの若者が説明を受けており、住居を改造している工事中の家屋も少なくとも2棟確認できて、確かに人気なのだと理解する。更には、木更津市にも存在していない木造平屋の壁を新しい木の板で補修している姿には古さを通り越してテーマパークのような感覚を受ける。この様な建築様式を見ていない若者には異空間と思えて人気が出るのだろうかと考える。木更津の市営住宅と同じようなブロック造でも改修が行われており、残念ながらこの日は閉店であったが既に店舗が営まれているようであった。
 多くの建物には車を停められる空間が無いため一団の建物から離れている5棟、8戸を解体して駐車場用地として確保してあり、この日も見学者や工事関係者などと思われる10台以上が停めてあったが公式HPでは車で来ることは遠慮願っている。
 
 
 緑が多く東京湾を見下ろせる高台で環境は良いが、住宅の周辺の石積擁壁に「あぶない」という看板がつけられていても気にしていないのかと思いながら帰りは山道のような狭い階段で田浦駅に戻る。距離は短いし照明も所々設置されているが暗くなってからは通りたくない道であり、このような立地であっても人気が出るような仕掛けも出来るのか、と感心する。
 
 木更津市の市営住宅で駅から近く緑に覆われたところは思い当たらないが、それは要素の一つに過ぎず、『「古いモノに価値を見出しながらクリエイティブに生活したい方たち」と「魅力的な新しいまち」を作っていきます』というコンセプトに賛同する人たちが自主的に行動することで魅力は生まれているのだろう。
 木更津市の保有する市営のうち179戸で最大規模の東清団地は人気も少なく、将来的に廃止して処分する方向性が公共施設再配置計画の中で決まっている。
 一方で東清団地のある東清小学校は小規模特認校制度を使って学校を維持している状況である。また木更津駅からの距離で考えれば人気の「ほたる野」と同じ程度の距離であり、更に久留里線という公共交通機関も整備されて東清川の駅もあるが利用者の減少に苦労している。立地条件を考えれば前にも書いたように駅前で土地区画整理が行われても良いと思うし、開発行為で住宅が出来ても不思議ではないがその様な動きが見えない以上、東清団地のリノベーションを通じて人口を確保して、通常の状況で小学校を維持し、併せて木更津市の人口増加につながるような政策が必要ではないかと考えている。
 
 30分程度の現場見学に往復8時間も投じて横須賀まで足を延ばしながら色々と考えてきたので取り急ぎ記載することとした。