漁組の総会に出る
2025/06/21記
 令和2年の木更津市内には6つの漁業協同組合が存在していた。北から順に牛込・金田・久津間・江川・中里・木更津であり、私は江川の組合員であった。しかしその前からのカイヤドリウミグモによるアサリの壊死などで木更津市の水産業の片方の主力が失われ、もう片方の主力である海苔も、クロダイやウミウによる食害を防止するための網の設置手間等が増える中で地球温暖化に伴う海水温の上昇で生産が減少し、各組合とも財政が悪化していた。
 さらにその状況で襲ったのがコロナウイルスによる感染症の蔓延で、不要不急の外出を慎むことが推奨され、各組合事業の収入の柱となっている観光事業の潮干狩りも令和2年の営業が中止に追い込まれるなど、組合を取り巻く状況は逼迫していた。
 
 その様な状況を事務の合理化や規模の拡大によって改善するため令和3年4月1日に牛込・久津間・江川・中里・木更津の5つの組合が合併し「新木更津市漁業協同組合」が誕生した。金田だけ別に残ったのは単独でもある程度の規模が有ったことと他の組合より財政状況が厳しいことで足並みをそろえることが難しかったからだと聞いている。
 5つの組合も様々な条件を整理したうえでの合併ではなく、県の指導の下に先に合併を行い5か年計画で合理化や調整を取るという形がとられた。最も規模の小さかった中里は合併の前に事務所を木更津の中に統合して借地していた建物を解体してしまったが、江川の事務所に久津間を統合して岩根支所にするのは合併から少し後のことになったし、現在でも旧組合別に独立した事業が営まれていることが多い。
 駆け込み合併とでもいうべき状況だったので合併時に設立総会は行われず、最初の総会は一年間の決算を報告する場となった令和4年6月23日まで待つことになった。従って昨日の総会は4回目となり3年ぶりの出席となった。因みに令和5年は本会議の最終日と重なり、令和6年は自治体公共Weekへ講演を聞きに行ったので欠席させていただいた。
 
 漁業を取り巻く環境の厳しさは変わらず、昨年の有明海の海苔が不作だったことに起因する単価上昇で収入が増えたものも居るが多くは海苔の生産を辞めてしまっており、組合員数も下表に示すように合併前と比べ僅か4年で20%も減少している。
R2末 R3末 R4末 R5末 R6末 減少率
正組合員 268 253 215 196 185 69%
準組合員 157 148 153 151 153 97%
合計 425 401 368 347 338 80%
減少率 0% -6% -13% -18% -20%
 内訳を見ると準組合員が正組合員ほど減少していないのは、実際に漁業を営んでいない私のようなものが正から準に移行しているからである。準組合員も総会に出席する権利を要しているが議決権は持っていない。これに関して前にも記載したが統合前の組合で資格を明確に分けていたのは江川と木更津だけであり、下表に示すように令和元年の値では組合員総数の25%となる牛込が全員正組合としていたために議決権の40%を抑えている状況であったので、少しづつ改善が進んでいるのだろうと思う。
正組合員 準組合員 組合員計 職員数 備 考
牛込 115 0 115 4
久津間 88 8 96 2
江川 24 62 86 3
中里 30 0 30 2 潮干狩り場無し
木更津 30 112 142 4
5協合計 287 182 469 15
 
 組合員数が20%減少する間に出資口数は29%も減っていた。そのため令和4年3月31日には3億6134万8千円あった出資金が令和7年3月31日には2億48454万7千円に減っている。財政状況を損益計算書から抜粋したものが下表である。
令和3年度 令和6年度 増減
事業総利益 71,576,678 99,902,041 28,325,363
事業管理費 188,554,033 170,159,104 -18,394,929
事業利益 -116,977,355 -70,257,063 46,720,292
事業外収益 174,570,139 115,447,025 -59,123,114
事業外費用 19,613,344 26,112,930 6,499,586
経営利益 37,979,440 19,077,032 -18,902,408
当期末処理余剰金 37,253,609 13,230,894 -24,022,715
 
 コロナの影響が大きかった令和3年度と比べ事業利益の赤字幅は減少しているものの事業外収益の減少が大きく経営利益が減少している。ではその事業外収益の主なものは何かといえば補助金や助成金などの公費による補填である。これも比較してみると下表の通りである。
令和3年度 令和6年度 増減
補助金 15,154,000 21,041,560 5,887,560
助成金 135,529,000 51,480,109 -84,048,891
交付金 0 22,500,000 22,500,000
合計 150,683,000 95,021,669 -55,661,331
 現在の財政状況は公費を補填しなければ持続できない状況であり、総会で発言されたM氏のように5ヶ年計画で行うという合理化や会計の統一、外部の税理士等による適正な資産の再評価などを行わねばならないという状況は当然だと思う。
 
 収益の柱である潮干狩り場もアサリを放流しないと来客者に充分楽しんでもらえない状況なので、最後にその状況を整理したものが下表である。
利用者数 漁場収入 放流費用 差し引き
牛込海岸 34,668 58,824,319 28,984,000 29,840,319
久津間海岸 19,105 32,970,397 15,069,150 17,901,247
江川海岸 16,505 27,577,551 12,963,600 14,613,951
木更津海岸 37,365 69,409,090 38,239,183 31,169,907
合計 107,643 188,781,357 95,255,933 93,525,424
 令和6年度は4つの海岸に10万人以上の来客が有り、入場料に超過料金等を合わせた収入は1億8878万円であったが、貝の放流に9526万円かかっている。放流量は合計で193トンに達し、中には来客に獲られず、鳥や魚に食べれることもなくシーズンを終えて子供を産むものも残るだろう。昔は自然に発生した貝類を採取してもらう対価として組合が潤っていたのだから、海の生産力が戻ったら経営環境は劇的に改善されるものと思う。
 それでも隣接する江川と久津間の統合による管理費の削減や牛込の牡蠣のような新規事業の開拓も必要だろう。海藻の陸上養殖が各地で始まっている報道番組を見たことが有るが、海に面し首都圏という大市場に近接した優位性などを考えると大きな可能性を秘めた組合であると私は考えている。
 
 総会では最後に役員の改選が有り、木更津&中里・江川・久津間・牛込の各地区より2人の理事、江川を除く各地区より1名の監事が選出され投票の結果承認された。理事の互選で合併当時からの組合長である江野澤均氏が引き続き組合長を担ってもらい事が決まり総会は終了した。
 経営状況が悪いこともあり役員報酬は僅かな額でありボランティアの様でもある。今後の運営も決して楽ではないが、木更津市の観光や都市イメージを支える担い手として今後を期待しながら備忘録としての記載を終了する。